憲法記念日から73年。緊急事態宣言と緊急事態条項について
今回は憲法公布から73年。改めて緊急事態宣言と緊急事態条項の問題について振り返ってみます。
2020年4月5日に安倍政権は新型コロナウイルス拡大防止のために緊急事態宣言を発令しました。
その一方では自民党は緊急事態条項を含めた憲法改正案の提出を目指しています。
安倍首相は緊急事態条項の必要性についても語りました。
毎日新聞の世論調査では45%が賛成しています。一方で32%がわからないと回答しています。
日本の緊急事態に関する法律
日本国内には緊急事態に対処するための法律は既にいくつかあります。
大きく挙げると
- 緊急事態(警察法。警察は緊急事態が発令したら内閣の元で動く)
- 災害対策基本法(地震、台風、噴火などの災害が起きたときに国は対策本部を設置)。避難所や物資などに関する制限はあり。供給が特に不足している生活必需物資の配給又は譲渡若しくは引渡しの制限若しくは禁止
- 原子力対策法(原発事故が起きたときに)。立ち入り制限などあり
- 疫病流行に対処するための緊急事態宣言(新型コロナウイルス)。地方自治体独自に対策可能
- 重大緊急事態(武力攻撃などを受けた場合)
- 緊急事態大臣会合(外部からの攻撃を受けたときに設置)。新型コロナウイルス流行の際に活用
です。
ある程度の私権制限はありますが、欧米などよりは自由です。
緊急事態条項とは
憲法改正と言えば国民の多くの人は憲法9条に自衛隊を明記するかどうかだと考えているでしょう。しかし自民党が一番重視しているのは"緊急事態条項を憲法に明記するかどうか"です。
緊急事態条項を発令するには
緊急事態条項とは大規模自然災害や外国による武力攻撃など緊急時における政府や国会の権限をあらかじめ規定するものです。
もし災害や戦争、疫病の大流行などの非常事態が起きると内閣総理大臣が閣議決定で緊急事態を宣言できます。
もし緊急事態の宣言は事前あるいは事後(5日前後?)に国会で過半数の承認を得なければなりません。延長するなら、国会で100日ごとに議決をする必要があります。
緊急事態条項の効果
緊急事態宣言後、内閣は法律と同一の効力を有する政令を発することができます。もちろん国会の承認が必要です。また地方自治体に対し必要な指示をさせることができます。(ここはコロナと同じかな?)
また基本的人権は最大限尊重しなければいけず、国民の生命や財産を守るための措置に国や機関からの指示に従わないといけません。
そして発令中は衆議院解散はできず、両議員の任期は特例で延長することができます。
緊急事態条項の問題点
私本人は緊急事態条項には以下の理由で反対の立場です。
まず1つ目は選挙停止ができることです。宣言自体は延長するなら100日ごとの議決が必要と書かれています。推進派は国会の議決が必要だから大丈夫だと言っています。
しかし国会に占めるのは大半が与党です。下手すればいつでも任期延長が可能になります。戦前のナチスドイツだけでなく、戦後でも韓国や台湾でも悪用された事例があります。
次に2つ目は条項を根拠に政令を自由に発動できる点です。実際にヒトラーはヴァイマール憲法の国家緊急権を悪用して憲法そのものを形骸化させました。その結果がこの後の歴史を見るとわかります。
それに上記にある緊急事態に関する法律で対処ができます。衆議院解散時でも災害などが起きた場合には参議院が緊急集会を開くことが憲法で明記されています。
3つ目は基本的人権についてです。最大限尊重すると書いてありますが、何か曖昧ですね。上記にも書いてありますが、現行法で対応すれば問題ないでしょう。制限云々は法案改正でいいでしょう。
他の国々の国家緊急権
アメリカやフランスなど国家緊急権はあります。が、アメリカの場合は大統領は議会召集だけでフランスは大統領が立法できる条件は厳しく制限しています。
自民党案の場合、歯止めがないので怪しいですね。というか権限が大きすぎるので悪用される可能性はありますね。